教授挨拶


関西医科大学医学部
精神神経科学講座 教授
加藤 正樹

令和6年4月より、関西医科大学医学部精神神経科学講座の主任教授を務めることとなりました加藤正樹です。当教室では、古典からの学びと最新のテクノロジーを組み合わせ、一人ひとりに最適な精神医療を提供することを目指しています。

歴史を紐解いてみると、人間の行動は、民族、宗教、国家、文化などのアイデンティティーに基づき、経済の好況や不況、戦争や自然災害、感染症や食糧危機など、さまざまな外部要因に対して概ね共通の精神力動と行動パターンを繰り返してきました。精神疾患の診断基準も、近年大きな変化は見られません。古典からの学びには多くを得るものがあります。しかし、歴史が単なる繰り返しにならないのは、情報伝達手段や移動手段のテクノロジーが進歩し、世界の距離感や価値観が複雑化しており、これらが精神力動や行動に相互作用しているからです。
医療技術やその基盤となる生命科学技術も急速に進化しています。私たちは、このような時代の流れを的確に捉え、技術の進歩を最大限に活用して、未解決の問題への解決策を見出し、より良い精神医療を多くの人々に届けるために、治療学を軸に、診療、研究、社会活動に励んでおります。特に、地域の医療機関で治療が困難な難治性精神疾患の適切な診断と改善に向けた治療に注力しております。また、身体疾患と合併した精神疾患のケアにも力を入れており、大阪府内全域の精神科病院や行政、自治体、消防と協力し、救命救急科と共に年間約200〜300例の患者さんを受け入れています。

教室では、臨床薬理、精神・薬理遺伝、臨床神経生理、脳機能画像、ニューロモデュレーションなど、遺伝子レベルから社会実装に至るまでの多角的なアプローチを展開し、臨床問題の解決を目指したプレシジョンメディシンの推進、ビッグデータやメタ解析を用いた社会実装研究を進めています。これらの研究を通じて、精神疾患の病態生理の解明、診療の質の向上、治療の最適化など、患者さんにとっての実用的な研究を目指しています。

医師は人を診て治す医学のスペシャリストです。精神科医はそれに加え、人生を脳科学や精神力動の観点から診断し、解釈して治療することにより、まさに人生のスペシャリストと言えるでしょう。スペシャリストになるためには、教科書や論文といった書物だけでなく、自己の様々な人生経験や、患者さんの人生と真摯に向き合う姿勢、臨床や日常生活においても決して諦めずに目標を追求する心を培うことが重要です。そうした過程で得られる学びの喜びを、私たちは教室のメンバー全員に伝えています。

当医局は、若手や女性スタッフが多く、出身大学も多岐にわたり、非常に活気に満ちています。ぜひ一度、遊びにいらしてください。

略歴

平成 9年 関西医科大学卒業、精神神経科入局
平成11年 みずき会芸西病院 精神科
平成14年〜平成15年 関西医科大学助教;救命センター派遣医
平成16年 関西医科大学精神神経科学講座助教
平成18年 関西医科大学大学院医学研究科博士課程学位取得
平成18年から平成20年 イタリアボローニャ大学精神神経科留学ポストドクトラルリサーチフェロー
平成21 関西医科大学精神神経科学講座講師
平成26年 関西医科大学精神神経科学講座准教授
令和1年   関西医科大学附属病院精神神経科科長
令和6年 関西医科大学精神神経科学講座 教授
関西医科大学総合医療センター 精神疾患・身体合併症センター センター長

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沿革

本学は1928年に設立された大阪女子高等医学専門学校を前身とし、大阪女子医科大学を経て、1954年に関西医科大学の名称となり現在に至っています。

本学における精神科の歴史は古く1932年にまで遡ります。当時の北野病院神経科部長で、後に和歌山県立医科大学名誉教授となる木村潔が外来診察を行うようになったのが最初で、その後、京都大学教授の三浦百重、大阪医科大学教授の満田久敏といった外部の医師が本学において診療を行っておりました。

現在につながる精神神経科学教室は、1958年に京都大学から岡本重一が初代主任教授として着任したことに始まります。
その後1984年には第2代の齋藤正巳へ、1997年には第3代の木下利彦へ、そして2024年からは第4代主任教授として、加藤正樹が教室を主宰する事になりました。
今までに輩出した同門会員は約220名弱に上り、関連病院をはじめとする様々な施設・機関で活躍しています。

本学の臨床上の特色としては、通常の外来・入院治療に加え、複雑化する精神疾患に対処するため、精神疾患患者の社会復帰を目的として、大規模デイケアを中心としたリハビリテ―ション部門、心理臨床部門、認知症部門を包括した「精神医療総合センター」を1999年に設置したことにあります。

また、2000年からは「もの忘れ外来」を設置し、本邦においても早い時期から高齢者医療に取り組んでまいりました。
2009年から「うつ病外来」などの専門外来の充実をはかっています。

入院治療としては、2002年からは薬物治療抵抗性/忍容性不良のうつ病、統合失調症、双極性障害などに修正型電気けいれん療法を開始するなど、大学病院としての特殊性を活かした医療を提供しています。

現在の教室員の構成は、教授、准教授、講師、助教、大学院生、研究医員、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士、鍼灸師という総勢50名以上の大所帯ですが、教室員一同、団結して、精神科医療の現在と未来に力を注いでいます。

創立当時の仮校舎(昭和3年)

岡本重一元教授を囲んで(昭和35年)

関西医科大学附属病院(昭和50年)

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