患者様へ
現在、当院当科では入院治療の一環として、麻酔科医立ち会いのもとECT専用ユニットでパルス波治療器による修正型電気けいれん療法(以下、m-ECT)を施行しております。当院でのm-ECT治療を希望される患者さまにおきましては、必ず以下の手順を踏んでいただく必要があります。
また、当院当科での診察の結果、精神状態・身体状況から当院でのm-ECT施行を適応外と判断させていただくことがあります。その点、ご了承ください。
患者様とかかりつけ医との間でm-ECT治療について話し合い
かかりつけ医から当院当科へ問い合わせ
現在の当院当科内で判定会議を開催
判定会議の結果を当院当科から現在の主治医へ伝達
当院での適応となりうる疾患
薬剤治療抵抗性、薬剤による副作用が顕著、緊急性(自殺切迫、身体衰弱)などが認められる下記疾患
- 大うつ病性障害
- 双極性障害
- 統合失調感情障害
- 統合失調症
医療関係者の皆様へ
施行をご検討された場合は下記リンクから必要な用紙をダウンロードし、ご使用ください。実際に当院でのm-ECT施行をご希望される症例がおられた場合は、当院に“m-ECT希望症例の病状照会”用紙をFAX又は直接送付頂ければ幸いです。

※1 数日〜1週間程度かかります。
※2 数週間〜2ヶ月程度かけて外来診察で適応を検討していきます。
※3 ECT背術前後に必要と考えられる薬物調整を行わせていただくことがあります。
※4 ECTの施術は入院のみ
※1,2,3の結果、精神・身体状態を勘案させていただき、ECT施術の適応外とさせていただくこともございます。申し訳ありませんが、ご了承ください。
受付窓口
関西医科大学総合医療センター
精神神経科
ECT台帳に関しまして
ECTは向精神薬による薬物療法よりも長い歴史を持つものの、けいれん発作の質や治療効果について包括的に定量化して評価した報告は決して多くはありません。そのため、ECT黎明期より“十分に全般化した発作”を出現させることが有効性を獲得する上で非常に重要であると広く認知されているものの、それを遵行するための明確な根拠はまだまだ十分とはいえないのが現状です。
臨床場面ではECTにおける有効けいれん発作の指標として、Mankadらが提唱した評価項目1)(①十分なけいれん発作持続時間 ②左右対称で同期した高振徐波 ③急峻な発作後抑制
④交感神経の興奮)を用いていますが、これまでのECT研究の多くが①をメインアウトカムとして用い、包括的(①-④)に発作の質と臨床効果を検討した研究はほとんど存在していないことが問題点でした。このため、我々はHoyerらが発表した、けいれん発作の質を包括的に0-3点で定量化することができるSeizure
quality
categories(SQC)2)などを用い、これまで経験的および感覚的に評価されることの多かったけいれん発作の評価場面を変え、ECT技術の均てん化を目指しています。
現在、当院と京都大学のECTグループではECT台帳をセッション毎につけて記録しています。本台帳ではけいれん発作の質を包括的に評価するためのスケールであるSQCやCASBAS3などが自動算出できるような仕様になっています。本台帳によってデータの共有化などが簡易になり、多施設臨床研究の一助となればと願っております。
また、実際に使用してみてお気づきになる点がございましたら、御意見頂戴出来ますと幸甚です。
関西医科大学精神神経科学教室 青木宣篤 嶽北佳輝
京都大学附属病院精神科神経科 川島啓嗣 諏訪太朗
参考文献
- Mankad, M. V., Beyer, J. L., Weiner, R. D., & Krystal, A. (2010). Clinical manual of electroconvulsive therapy. American Psychiatric Pub.
- Hoyer, C., Kranaster, L., Janke, C., & Sartorius, A. (2014). Impact of the anesthetic agents ketamine, etomidate, thiopental, and propofol on seizure parameters and seizure quality in electroconvulsive therapy: a retrospective study. European archives of psychiatry and clinical neuroscience, 264(3), 255-261.
- Brunner, I., & Grözinger, M. (2018). Brief vs. ultrabrief pulse ECT: focus on seizure quality. European archives of psychiatry and clinical neuroscience, 268(8), 831-838